野生動物による被害が年々増え続けています。
とくにアライグマによる被害は、農作物に限らず一般の民家にもみられ、都会でもその被害が聞かれるようになってきています。
このページでは、アライグマによる被害の影響や、他の動物による被害との見分け方、被害にあわないため・拡大させないための対策について説明します。
アライグマはカナダからアメリカ、中央アメリカが原産の食肉目アライグマ科の動物で、本来日本には生息しない外来種です。
しかし、ペットとして飼われていたものが逃亡したり、飼いきれなくなって野山に放されたりして今では日本にも定着しています。
日本国内では北海道から九州までほぼ全域でみられます。
大人の個体は胴体が40〜60cm、尾が20cm〜40cmくらい、体重は3〜10Kgくらいです。
全体的に灰白色ですが、黒色もいます。尻尾はふさふさの毛で黒いリング状の模様があり、この模様が他の動物と見分ける際にわかりやすい特徴になります。
目の周りと鼻筋、鼻が黒く、鼻の周りは白色です。
アライグマは夜行性で、日中は地面や樹木にあいた穴に入って眠っています。民家や倉庫の屋根裏などに入り込むこともあります。
繁殖期は春(4月〜6月頃)。妊娠期間は2ヵ月くらいで、1回に3〜5頭の子どもを生みます。
雑食性で、果物や木の実、野菜、小動物、昆虫、鳥、卵、爬虫類、魚、甲殻類など何でも食べます。
手は5本の長い指があり、ものを掴んだり果物や野菜の皮を剥いたりくり抜いたりするなど、とても器用です。
木登りが得意で、垂直の木立を軽々と登ることができます。
このようにとても生命力が強い上、日本ではこれといった天敵がいないため、生息数が年々増加して、被害数も増えています。
アライグマ対策の電気柵の設置法はこのようになります。
アライグマは民家の屋根裏に入り込むなど、私たちのすぐ近くに住みついていることもよくあります。
天井一枚、壁一枚隔てた裏側に入り込んでしまうわけですが、その際に問題になるのが私たち人間の健康被害です。
アライグマは餌を取りに出かける際には、人目につかない側溝の中を歩いたり、森や林の中を通ったり、生ゴミを漁ったりしています。
そのときにダニや寄生虫、食中毒菌などが体につけ、そのまま屋根裏などに戻ってきてしまいます。
そのような微生物や細菌はその場所でそのまま繁殖したり、アライグマの通り道から私たち人間の生活スペースへも入ってきてしまいます。
人間に感染れば、重い症状が出たり、場合によっては死に至るような病気にかかってしまうこともあります。
「アライグマ回虫」といわれる寄生虫を持っている可能性もあります。この寄生虫は神経障害を招いたり死に至らしめるような危険があり、十分な注意が必要です。
※「アライグマ回虫」は国内の自然界ではまだ発見されていません。
アライグマは小さな隙間から民家や倉庫・神社等に侵入して、屋根裏などに住み着くことがよくあります。
そのとき、壁や柱を傷つけたり糞尿等で悪臭が出たり汚してしまうことがあります。屋根裏などを歩く物音が聞こえることもあります。
また、ペットや家畜が傷つけられる危険もあります。ペットフードや家畜の餌が食べられてしまうこともあります。
アライグマは畑に侵入して農作物を荒らすこともあります。
特に甘い果物などが好物で、各地で被害が報告されています。
果物以外にもトウモロコシやジャガイモ、トマトなどの野菜もよく被害にあっています。
アライグマの足跡
長い5本の指が特徴で、ヒトの手を小さくしたようにも見える。
かかとまでしっかりとしたあとが残っていることが多い。
該当するものがひとつでもあったらアライグマが来ていたり住みついている可能性が高いです。
すぐに自治体の農政課等へ相談し、対策をとりましょう。
本当にアライグマのしわざかどうかを確認するには、自動撮影カメラを使って動画や写真を撮りましょう。
とくに動画で撮影できれば、大きさや何匹ぐらいかなどがわかり、しっかりした対策がとりやすくなります。
アライグマはエサがあることがわかると近づいて来ます。「近くには食べるものがない」と認識させるよう、エサになるようなものはできるだけおいておかないようにしましょう。
残念ながら、「かわいいから」という理由で餌付けをしてしまう例も時々みられますが、絶対にしてはいけません。
もともと日本に存在しないはずのアライグマが与える生態系への影響はとても大きく、本当なら生き残れるはずだった日本古来の在来種が絶滅に追いやられる可能性も十分に考えられます。
アライグマは木登りが得意で、垂直に立つ木の幹を軽々と登ることができます。同様に柵や塀なども登ることができます。
天井裏等への侵入口となる部分はしっかりと金網で塞ぎます。障害物を置くだけでは器用な手で動かして侵入されることがあります。
また、アライグマは人目につきやすい開けた場所を嫌います。雑草を刈ったり不要なものを片付けるなどして、アライグマが隠れられる場所を減らしましょう。
アライグマは木酢液やくん煙剤のニオイが苦手と言われています。
侵入経路やエサ場、寝床にまいて近づけないようにします。
建物に侵入され、寝床にされてしまっていたらくん煙剤を使えば追い出すことができます。
くん煙剤を使用する場合は、侵入経路の入り口をふさぐ前に使用し、確実に出ていったことが確認できたら入り口をふさぎましょう。
アライグマはフェンスを登ることができますので、フェンスだけではあまり効果が期待できません。
フェンスの途中に有刺鉄線や有刺鉄板を入れると効果を高めることができます。
アライグマによる農作物被害を防ぐには、電気柵を使った方法が最も効果があるそうです。
アライグマの対策にはアライグマに特化した設置方法があるため、作物を荒らしているのが確実にアライグマであるということをはっきりさせ、アライグマ用の正しい設置方法で設置することが大切です。
被害をもたらすとはいえ、動物を捕獲する場合は都道府県へ許可申請が必要です。
さらに罠を使って捕獲する場合には狩猟免許という国家資格の取得が必要です。
追い出したり近づけない対策では効果が出ず、捕獲や駆除が必要な場合は、自治体やプロの業者に相談しましょう。
アライグマは農作物を荒らしたり建物を壊す以外にも、細菌や微生物を媒介することでヒトに大きな健康被害をもたらします。
建物や農地へできるだけ近づけない対策をとり、侵入されてしまったら速やかに追い払い、必要に応じて自治体やプロに駆除の相談をしましょう。